コーヒーを自分で淹れる時、思ったような味が出ない時ってありませんか?
有名なカフェで飲む一杯を再現したくて、いざ気合を入れて家でドリップしてみると苦すぎたり、酸味が強すぎたり…。
一体何が原因だろうと私も色々と試していました。。
そんな試行錯誤を繰り返している最中に、コーヒーの味を数値化することができるという機械を見つけました!!
画期的すぎるアイテムにかなり驚いたことを鮮明に覚えています。
今回は、その機械の紹介と機械で測れる「Brix」「TDS」「収率」について、ご紹介します!
ATAGO ポケットコーヒー濃度計
早速、コーヒーの味を数値化する画期的アイテムのご紹介からいたします。
株式会社 アタゴ社のポケットコーヒー濃度計です。
■外箱
ビニールのような素材でポケットにすっぽり入る大きさ
■本体(PAL-COFFEE(TDS))
防水加工になっており上部の黒い丸にコーヒーを入れます
この機械を通して「コーヒーの濃度」と「苦味・酸味」を測ることができます!
実際に測るものは、抽出されたコーヒーの「TDS」「収率」「Brix」という3つが計測されるため、計測結果だけをパッと見てコーヒーの味を把握することはできません…。
そのため、SCAA(Speciality Coffee Association America)のコーヒー抽出チャート(Coffee Brewing Chart)を参照する必要があります。(詳細は後述します!)
記事下に、コーヒー抽出チャートを載せていますのでご覧ください。
また、「TDS」と「収率」はそれぞれの値を計算式に当てはめることで算出されますが、コーヒー濃度計で計測された「TDS」を専用のアプリに入力することで「収率」を自動で算出してくれるため、いちいち計算する必要はなくなります!
「TDS」も「収率」も「Brix」もなんのこっちゃという感じだと思いますが、後ほど詳しく説明しますので安心してください。
もし、ATAGOのコーヒー濃度計の購入を検討されている方は、Amazonや楽天にも商品はあるようですが在庫がなかったり価格が割高のこともあるので、ATAGOのオンラインショップから購入された方が良いかもしれません!
ポケットコーヒー濃度計 スペック
アタゴのポケットコーヒー濃度計は名前の通り、ポケットに入るほどのコンパクトな大きさです!
3種類のコーヒー濃度計があり、それぞれ測れるものが違います。
専用のアプリを使用することで、「TDS」をもとに「収率」と「Brix」も算出することができるので、購入検討をされている方で値段を少しでも安く抑えたい方は『PAL-COFFEE(TDS)』でも良いと思います!
ちなみに、私が持っているのは「TDS」のみ計測できる『PAL-COFFEE(TDS)』です。
本当は、『PAL-COFFEE(BX/TDS)』の存在を知らなかったので『PAL-COFFEE(TDS)』を購入したのですが、結果的に十分活用できています。。
PAL-COFFEE | PAL-COFFEE(TDS) | PAL-COFFEE(BX/TDS) | |
---|---|---|---|
金額 | 27,500円 | 27,500円 | 30,000円 |
測定できるもの | Brix、温度 | TDS、温度 | Brix、TDS、温度 |
それぞれのスペックやアタゴのコーヒー濃度計についてもう少し詳しく知りたい方は、商品ページとカタログのリンクも以下にありますので、是非ご活用ください!
■コーヒー濃度計 商品紹介ページリンク
■コーヒー濃度計 カタログページリンク
アタゴ社のポケットコーヒー濃度計をかなり推していますが、決してアタゴ社に依頼されていたり等ではないので、悪しからず。。
Brixとは
Brixは、「ブリックス」と読みます。
Brixは%で表示され、ショ糖液(砂糖液)100g中に含まれるショ糖のg数を目盛ったものです。
すなわち、ショ糖1gのみを含むショ糖液100gを測定した場合には、Brix値は1%と表示されます。(99%は水)
また、Brixには、ショ糖以外にも水溶液(ここでいうコーヒー)の中に含まれる可用性固形分のパーセント濃度も示します。
コーヒーでいうと「カフェイン」や「クロロゲン酸」などの水に溶ける物質が可用性固形分であり、Brixの値はそれらの合算値が表示されます。
ただし、Brixはショ糖が水溶液中に含まれている場合の割合を示すもののため、他の物質を主体とした溶液(コーヒー)で、定量的に濃度を知りたい場合には換算表が必要となります。
つまり、コーヒーのようにショ糖以外の物質も水溶液中に含まれている場合は、Brix値は正確な濃度ではないということです。
コーヒーの濃度を知りたい場合には、計測されたBrix値に「0.79」という定数を掛けること(これが上述してある換算表)で、正確な濃度を算出することができます。
この濃度が次に説明する「TDS」です!
なんだかとっても難しく書いてありますが、ここまではそういうものかと理解していただけると良いかと思います!
「実際のコーヒーの濃度(TDS)を算出するには、このBrix値を使用しているよ」という話だから、本題は次の「TDS」と「収率」だね!
Brix値 × 0.79(換算表)≒ コーヒー濃度(TDS)
この「0.79」という定数は、「SUGI」さんが記載した以下の記事を参考にしています!
実際に計測した結果で「0.79」という数字を掛けると、確かにTDSになりました。
(※ピッタリではなく近似値)
TDS(Total Dissolved Solids)とは
TDSは、「Total Dissolved Solids」の略で、日本語に訳すと「総溶解固形分」となり、数値で示すときは「%」表示です。
すなわち、コーヒーの中に含まれているコーヒー成分の割合です!
例えば、コーヒー100gの中に、コーヒー成分1gが含まれているとしたらTDSは1%ということになります。
これが、コーヒーの濃度を数値化したものです!
TDSはコーヒーの濃さを示したものなので、TDSが高いと濃いコーヒーが出来上がり、TDSが低いと薄いコーヒーが出来上がります!
「濃い」「薄い」でイメージし辛い方は、TDSが高いと「コク」や「キレ」が強いコーヒーで、TDSが低いと「まろやか」だったり「スッキリ」とした飲みやすいコーヒーをイメージするとわかりやすいかもしれません。
美味しいコーヒーというのは人によって異なるため、一概にTDSいくつが良いと断定は難しいですが、適正値は「1.15〜1.35%」とされています。(SCAAの[Coffee Brewing Chart] 参照)
適正が1.15〜1.35%ということは、コーヒーの99%ほどは水で構成されているってことなんですね!
その通り!なので、美味しいコーヒーを飲むときは水も大事な要素といえるよね。
■TDS算出式
コーヒー液中のコーヒー成分の重量 ÷ 抽出されたコーヒー液の重量 × 100 = コーヒー濃度(TDS)
■Brix値を用いた方法(Brixのセクションで説明済み)
Brix値 × 0.79(換算表)≒ コーヒー濃度(TDS)
収率(Extraction Yield)とは
収率(しゅうりつ)は、英語で「Extraction Yield」で「EY」と略されることもあります。
また、数値で示すときは「%」表示です。
収率とは、コーヒーの粉に対するコーヒー(液)に抽出されたコーヒーの成分の割合を指します。
すなわち、コーヒー粉からコーヒーへ抽出する際に、どれだけ上手に抽出できたかを表す数値となります!
収率が高すぎるとコーヒー粉からたくさんの成分が抽出されていることになるので「過抽出」となり、収率が低すぎるとコーヒー粉からあまり成分が抽出されなかったことになるので「未抽出」ということになります。
こちらも一概に「この数値が一番です!」と断定することは難しいのですが、適正値は「18〜22%」とされています。(SCAAの[Coffee Brewing Chart] 参照)
ちなみに収率の上限は30%前後とされているようで、ここまでいくともちろん「過抽出」ということになります。
また、収率はコーヒー濃度計で計測することができないため、TDSを用いて算出されることになります。
コーヒー粉からは、たったの20%前後しか成分を抽出できていないというのも驚きですね!
80%以上はコーヒー粉に成分が残っていると思うと、そのまま捨てるのがもったいないよね…。。
■収率算出式
コーヒー液中のコーヒー成分の重量 ÷ コーヒーの粉の重量 × 100 = 収率
■TDSを用いた方法
TDS値 × 抽出されたコーヒー液の重量 ÷ コーヒー粉の重量 = 収率
TDSと収率によるコーヒーの味の解析
「TDSは、コーヒーの濃度」であり、「収率は、いかにコーヒーの粉から成分を抽出できたか」を表す数値です。
それらの数値から、SCAAのコーヒー抽出チャートを参照して、コーヒーの抽出がうまくいったかを確認することができます!
縦軸が「TDS」で横軸が「収率」です。
TDSが低い場合はコーヒー濃度が薄いのですが、この場合は英語表記で「WEAK」と記されます。
反対に、TDSが高い場合はコーヒー濃度が濃いので、この場合は英語表記で「STRONG」と記されます。
また、収率が低い場合は未抽出となるので、「UNDER-DEVELOPED」と記されます。
反対に、収率が高い場合は過抽出となるので、「BITTER」と記されます。
TDSの適正値は「1.15〜1.35%」で、収率の適正値は「18〜22%」です。
TDSと収率のどちらも適正値の場合が、濃度も抽出もバランスが取れている理想的なコーヒーとされています!
収率に関して、もう少しご説明させてください。
収率の「UNDER-DEVELOPEDとBITTER」は、「酸味と苦味」という認識に置き換えていただいても問題ありません!
というのも、コーヒーを抽出する際と、初めは酸味の成分から抽出されて、その後に糖分などの甘味の成分が抽出されて、最後に苦味の成分が抽出されてきます!
そのため、収率が低い未抽出の場合には酸味成分が多く抽出されるため酸味が強く、収率が高い過抽出の場合には苦味成分が多く抽出されるため苦味が強くなります。
結果的に、「UNDER-DEVELOPED」=「酸味が強い」、「BITTER」=「苦味が強い」となります!
浅煎り焙煎されたコーヒー豆は、焙煎でコーヒー豆の細胞が硬く成分があまり抽出されないため、TDSと収率はどちらも低くなりやすいです。
深煎り焙煎されたコーヒー豆は、焙煎でコーヒー豆の細胞が柔らかく成分がよく抽出されるため、TDSと収率はどちらも高くなりやすいです。
以前私が計測した結果を例に確認してみましょう!
こちらは浅煎りのコロンビアをペーパードリップで抽出したときの測定結果です。
TDS:1.37%
収率:17.16%
TDSは1.37%のため濃度は適正値です。
ただし、収率が17.16%なので、多少未抽出で酸味が少し強いコーヒーということになります。
理想的コーヒー抽出を目指すためのTDSと収率の調整
コーヒー抽出チャートのそれぞれの領域を簡易的に日本語で記すと以下のようになります!
【1:TDS高く、収率低い】 ・未抽出(酸味が強い) ・濃度が濃い | 【2:TDS高い】 ・酸味と苦味のバランスが良い ・濃度が濃い | 【3:TDS高く、収率高い】 ・過抽出(苦味が強い) ・濃度が濃い |
【4:収率低い】 ・未抽出(酸味が強い) ・濃度が適正 | 【5:適正値】 ・酸味と苦味のバランスが良い ・濃度が適正 | 【6:収率高い】 ・過抽出(苦味が強い) ・濃度が適正 |
【7:TDS低く、収率低い】 ・未抽出(酸味が強い) ・濃度が薄い | 【8:TDS低い】 ・酸味と苦味のバランスが良い ・濃度が薄い | 【9:TDS低く、収率高い】 過抽出(苦味が強い) 濃度が薄い |
【5】以外の【1】〜【9】の場合は、TDSと収率を適正値に近づけるため、抽出するときに調整をする必要があります。
コーヒー粉の粒度や粉の量、湯温など色々と変えてみて、【5】の適正抽出を目指す必要がありますが、いきなり色々と変えて調整するのではなく、どれか1つの要素を調整して適正抽出を目指すのが良いかと思います!
・粒度:粒度が粗いと収率とTDS共に低くなり、粒度が細かいと収率とTDS共に高くなります。
・湯温:湯温が低いと収率とTDS共に低くなり、湯温が高いと収率とTDS共に高くなります。
・粉量(TDS):粉量が少ないとTDSは低くなり、粉量が多いとTDSは高くなります。
・粉量(収率):粉量が少ないとTDSは高くなり、粉量が多いと収率は低くなります。
粒度と湯温を調整すると収率とTDSのどちらも上昇、下降しますが、粉量に関してはTDSと収率はそれぞれ正反対ですので注意が必要です!
これを踏まえてそれぞれ調整する場合には、以下のように調整すると良いと思います!
(あくまで参考のため、以下の表でうまく調整できない場合にはその他の要素も調整してみてください。)
【1:TDS高く、収率低い】 ・粉の量を減らす ・粒度を粗くする | 【2:TDS高い】 ・粉の量を少なめに微調整 ・粒度を少し荒めに微調整 | 【3:TDS高く、収率高い】 ・粒度を粗くする ・湯温を下げる |
【4:収率低い】 ・粉の量を少なめに微調整 ・粒度を少し荒めに微調整 | 【5:適正値】 ・理想的なコーヒー抽出 | 【6:収率高い】 ・粉の量を多めに微調整 ・粒度を少し細かく微調整 |
【7:TDS低く、収率低い】 ・粒度を細かくする ・湯温を上げる | 【8:TDS低い】 ・粉の量を多めに微調整 ・粒度を少し細かく微調整 | 【9:TDS低く、収率高い】 ・粉の量を多くする ・粒度を細かくする |
表にするとややこしく見えますが、実際に計測してみるとそれほど難しくないので興味がある人は一度試してみると良いかもしれません!
注意点
TDS、収率ともに適正値になったとしても、必ずしも美味しいコーヒーになるとは限りません!!
コーヒーは嗜好品であるため、人によって味の好みは異なってきます。
そのため、TDS、収率共に適正になっても、イマイチコーヒーの味わいが好みではない場合は、ここでも調整してみると良いかと思います!
例えば、もう少し酸味のあるコーヒーにしたい場合には粒度を少し粗くしてみたり、粉の量を少なくしてみたり、もう少しコクのあるコーヒーにしたい場合には、粒度を少し細かくしたり、粉の量を少し多くしてみてコーヒーの味わいを微調整してみましょう!
TDSと収率だけを意識して抽出すると好みの味わいにならないことも多いので、あくまで参考目安というように捉えておくと良いですね!
コーヒー抽出チャートの欠点
今回のコーヒー抽出チャートについて、こちらは1957年にロックハート博士という方が研究して導き出したものです。
今から70年ほど前に確立された理論であり、現在もそれを活用して美味しいコーヒーの探求が行われていると思うとすごいですよね!
ただし、このコーヒーチャートも万能ではなく、いくつかの欠点があります…。
それら欠点を理解した上で活用した方が良いかなと思います!
欠点1:適正値=消費者の好みではない
注意点にも記載しましたが、TDSと収率のどちらも最適値だったとしても、イコールで絶対に美味しいコーヒーというわけではありません。
コーヒーの好みは千差万別です。
そのため、いくら抽出されたコーヒーのTDSと収率が完璧な適正値でも、コーヒーを飲む方の好みに直結するわけではございません。(万人受けするコーヒーにはなるのかもしれませんが…)
このコーヒーチャートでは、そこをイコールの関係としているため、実際に適正値になったとしても、好みの味わいにならない場合には抽出を調整する必要があります!
欠点2:数値の僅かな違いを知覚できない
例えば収率が「14%(酸味が強い)」の場合と「26%(苦味が強い)」の場合では、はっきりと酸味と苦味の違いを知覚することはできると思います。
ただし、収率が「17.99%」と「18.01%」の場合では、実際に味の違いを知覚することができない方がほとんどです。
私も当然できません!!
その場合でもコーヒー抽出チャート上では、「17.99%」は「UNDER-DEVELOPED」で、「18.01%」は「適正値」と区別されてしまいます。
数値を表にして各領域を用意する場合には、しきい値は当然発生しますが、実際に飲んでみたときにその違いはハッキリとわかるものではないため注意は必要です!
欠点3:コーヒーの多様なフレーバーを考慮していない
コーヒーには、生産方法や品種によってコーヒーのフレーバーが変わってきます。
例えば「オレンジの風味」や「ビターチョコレートの風味」など、コーヒーには様々なフレーバーがあり、その味わいを楽しんでいる方も少なくないかと思います。
しかし、今回紹介した「TDS」と「収率」では、それらのフレーバーを把握して味を数値化できるわけではありません。
コーヒーの大事なフレーバーがコーヒー抽出チャートでは、「酸味と苦味」という大きな括りでまとまってしまっているため、あくまでもコーヒー抽出チャートは「濃度」と「いかに抽出できたか」という2つの視点を可視化できるものと理解しておくことが大事です。
コーヒー抽出チャートの欠点を踏まえて
上記3つの欠点を踏まえて、コーヒー抽出チャートは活用する必要があります!
あくまでも、数値化することにより「コーヒーの濃度」と「酸味・苦味」が数値として可視化できるものであり、参考目安として活用するのが一番だと思っています!
自分の思っている美味しいコーヒーに近づくために、現在のコーヒーの要素が少しでも可視化できれば、そこからうまく調整して、自分だけの理想のコーヒーに近づくことができるので、このデータだけを過信しすぎずうまく活用すると良いですね!
また、SCAにてコーヒー抽出チャートに関するトピックがありますので、興味のある方はこちらも参考にしてみてください!
(※記事内は英語表記です。)
最後に
前述した通り、コーヒーの焙煎度合いによってもTDSと収率は変わってきます。
ちなみに「Room Coffee Factory」でもTDSと収率を考慮してコーヒー豆の焙煎は、おこなっております!
あなた好みの美味しいコーヒーを抽出するために、うまくコーヒーを抽出できない場合はお気軽にご相談ください。
それでは、楽しい珈琲ライフを!